双極性障害は、社会的影響の大きな疾患であるが、その研究は著しく遅れており、未だ精神疾患の特異的検査法は存在しない。1)双極性うつ病の鑑別(素因マーカー)、2)治療効果予測(薬物反応性マーカー)、3)再燃可能性の予測(うつ状態マーカー)が存在すれば、気分障害の臨床は大きく進歩すると考えられる。我々はこれまで、多くの網羅的遺伝子発現解析研究を通して、これらの素因/薬物反応性マーカー候補を得てきた。また、我々は周期的にうつ状態を呈する双極性障害モデルマウスを開発した。本研究の目的は、これまでに見出した遺伝子発現量、小胞体ストレス反応などの候補マーカーの有用性について検討すると共に、モデルマウスを用いて、新たなマーカー候補を同定し、その妥当性を臨床サンプルで確認することである。これまでに、双極性障害患者および対照群のリンパ芽球サンプルの収集を進め、これらのサンプルを用いて、候補となる遺伝子の発現量をTaqManプローブおよびSYBR GREEN法を用いた定量的リアルタイムPCR法により、リアルタイムPCR定量装置ABI-9700HT(Applied Biosystem社)を用いて測定した。比較する対照遺伝子としては、β-actinおよびGAPDHの二つを用いた。測定した遺伝子は、小胞体ストレス関連およびミトコンドリア関連遺伝子である。これらのデータについて現在解析を進めている。一方、躁うつ病モデルマウスにおいて、海馬および大脳皮質においてDNAマイクロアレイを用いて行った遺伝子発現解析の結果、発現量変化を示した遺伝子の中から、患者死後脳においても同じ変化を示す遺伝子を同定した。
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