研究課題
これまで、超高静水圧処理によって脱細胞スキャホールドを作製し、界面活性剤処理より遙かにすぐれた成績を報告してきた。高圧処理後、組織内に残存した細胞残渣の除去方法として、これまでに、マイクロ波などによる高効率の洗浄を利用してきたが、組織移植後の若干の石灰化など、未だ微量残留物の影響の疑いもある。そこで、「プレインプランテーション法」により、生体内に備わる免疫応答を含む生体内環境による微量成分除去を進めた。従来の洗浄メディウムに比較して半分の期間で微量成分除去が可能となることが明らかとなった。さらに、このメカニズムを詳細に解明することに成功し、超高静水圧処理のみに比較して数段優れた処理方法となることが期待される。一方、ポリ乳酸誘導体により作成した再生型人工血管の孔径と空孔率が、そのプレインプランテーション時の組織反応性と自己組織化に大きく影響を与えると考えられている。そこで、移植後の血管内皮細胞や平滑筋細胞、線維芽細胞の浸潤性について検討した。スキャホールドに対する生体反応としての、カプセル化などのネガティブな因子と、炎症により誘起される毛細血管新生などの比較的ポジティブな因子とを精密に制御するために、埋入初期段階における免疫反応や異物反応などを詳細に評価した。その結果、テンプレート表面の特性が前者のネガティブ因子を大きく左右することが明らかとなり、合成材料製人工血管を「テンプレート」として生体にプレインプラントすることで、組織再生に有利なスキャホールドと成り得る可能性が示唆された。
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