研究概要 |
本研究はこれまで我々が開発してきた自己組織再生型人工複合材料を用いて胸部外科領域の臨床で安全に使用し得る代用気管を開発することを目的とした。 気管は気道という外界と生体との接点に位置するため、常に異物を排除しようとする生体の作用や感染、痰の貯留などきわめて厳しい条件下に置かれる。我々は生体親和性の高いコラーゲンと人工材料をグラフト重合させた上にコラーゲンをコーティングしたコンポジットを用いて代用気管を作製し、動物実験において有用性・安全性を確認してきた。その結果2002年より京都大学医学部倫理委員会等の審査を経て、現在までにすでに13例の患者に使用して良好な結果を得ている。しかしながらいずれも耳鼻科領域の頸部気管の再建であり、本研究では胸部外科領域の再建で安全に使える人工気管の改良を行った。 本年度は気道の組織化を促進すると考えられるサイトカイン(TGF-b, b-FGF, HGF)を代用気管のマトリックス部分に複合化する技術開発を検討した。単にコラーゲンに含漬させただけでは初期にバーストしてしまうのでDDSを用いる方法を検討している。 動物実験で代用気管を埋め込んだビーグル犬を屠殺して安全性・効能・病理組織・再建部気管の物性解析をコンピューターを用いて行い評価を行った。この評価には新たに導入された高速スパイラルCT装置を用いて3D画像上で内腔狭窄率の解析を行った。 動物実験で長期の安全性と効能の確かめられた新型代用気管モデルは、ただちに臨床応用に移る予定である。
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