研究概要 |
p63が軟骨細胞の発生、分化およびアポトーシスに至るまで、軟骨内骨化の全ての過程に重要な役割を果たすことが前年度までの解析で明らかとなったため、最終年度はp63の6つのアイソフォーム(TAp63α, TAp63β, TAp63γ, deltaNp63α, deltaNp63β, deltaNp63γ)ごとの発現を解析したところ、軟骨細胞の分化初期にTAp63αが、後期にTAp63γがそれぞれ優位に発現し、その他のアイソフォームはほとんど発現していないことが分かった。またTAp63αとTAp63γの機能を解析したところ、軟骨基質などの初期分化マーカーはTAp63αに、10型コラーゲンやコラーゲン分解酵素などの後期分化マーカーはTAp63γに、それぞれ優位に誘導されうることが判明した。これらの結果は、アイソフォーム特異的なsiRNAによっても裏付けられた。さらに2型コラーゲンプロモーターによるTAp63αの軟骨特異的トランスジェニックマウスでは増殖軟骨層と肥大軟骨層の両者が拡大したのに対して、2型コラーゲンプロモーターによるTAp63γの軟骨特異的トランスジェニックマウスでは肥大軟骨層のみが拡大した。これらの結果より、軟骨初期分化においてはTAp63αが、後期分化においてはTAp63γが、それぞれ主要な役割を担っていることが明らかとなった。さらにマウス変形性関節症モデルを用いた基礎検討では、p63ヘテロノックアウトマウスにおいて変形性関節症の進展が遅延する傾向があることが示唆された。
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