研究概要 |
(目的)これまでヘルパーT細胞は,type1(Th1)とtype2(Th2)のバランスにより免疫を制御すると考えられていた。しかしながら,ごく最近になり新たなヘルパーT細胞としてIL-17を産生するTh17が発見され,各種免疫疾患の理解に劇的な展開をもたらしている。しかしながら,子官内膜症(EM)においては,これまで患者の腹水中でIL-17の濃度が有意に高いとの報告があるのみである。今回,私たちはEM患者の腹腔内貯留液(PF)中の単核球(PFMC)におけるTh17の存在を明らかとし,IL-17のEM症細胞(ESC)に対する効果につき検討した。 (方法)EM患者より同意を得た上で,PFと切除したEM組織の一部を用いた。EM組織よりESCを分離培養し,以下の検討に用いた。1.flow cytometry法にてPFMC中のTh17の存在を調べた。2.免疫染色法にて,EM組織におけるTh17の局在を調べた。3.ESCのIL-17mRNAの発現をPCR法で,IL-17受容体(IL-17R)の発現を免疫染色法で調べた。4.ESCをIL-17で24時間刺激し,IL-8の産生をELISA法にて調べた。さらに,IL-17Rの中和抗体を添加した上で上清中のIL-8産生をELISA法にて調べた。5.ESCをIL-17で48時間刺激し,BrdUの取り込みを調べた。 (結果)1.EM患者PF中にTh17が存在した。2.Th17は,正常子宮内膜に比較しEM病変に著明に多く存在し,腺上皮の直下に多く局在していた。3.ESCはIL-17RmRNA,IL-17Rを発現していた。4.ESCは1ng/ml以上のIL-17刺激により有意にIL-8の産生を亢進した。また,IL-17Rの中和抗体は,このIL-8産生を抑制した。5.IL-17刺激は,1ng/m1以上でESCのBrdUの取り込みを有意に増加させた。 (結論)EM患者の腹水中及びEM病変にTh17が存在することを明らかにした。IL-17はESCにおいて,EM進展の重要因子であるIL-8産生を促進し,増殖を促すことを示した。EMの増悪においてTh17が重要な役割を果たすことが示唆された。
|