研究課題/領域番号 |
18251001
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
西山 要一 奈良大学, 奈良大学・文学部, 教授 (00090936)
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研究分担者 |
酒井 龍一 奈良大学, 文学部, 教授 (00153859)
栗田 美由紀 奈良大学, 文学部, 助教 (00309527)
泉 拓良 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30108964)
中村 晋也 金沢学院大学, 芸術文化学部, 講師 (10301003)
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キーワード | 壁画地下墓 / ローマ時代 / レバノン共和国 / 学際研究 / 保存環境 / 顔料 / 修復 |
研究概要 |
本研究は、レバノン共和国ティール市郊外に所在するローマ時代に構築された壁画の描かれている地下墓の保存科学・考古学・美術史学等の学際的研究によって、地下墓の歴史的文化的研究を行い、墓室内部の損傷を修復して保存公開を企図するものである。 第2年目の本年は、地下墓TJ04の墓室内外における温度・温度・照度・紫外線強度・二酸化炭素濃度・大気汚染濃度等の環境測定を行い、地下墓室内の環境は極めて安定していて、これが2000年を経た今日まで壁画を良好に保つことが出来た要因であること、壁画の顔料と現在の顔料の蛍光X線分析装置による材質分析と比較によって、緑色は緑土、赤色は酸化鉄でありレバノンの山岳地帯で原石が採取され精製された顔料である可能性が高いこと、日本・レバノン両国による壁画の美術史的共同研究により、ローマ時代壁画の伝統に則りつつレバノン独自の壁画の発展が見られること等を明らかにした。 また、遺構の実測および出土遺物の実測、写真撮影によるドキュメントを完成した。 損傷していた地下墓の納体室(納棺室)、墓室入り口の石扉、地上から地下墓室への石階段は莫室内より発見したオリジナ石材とレバノン考古総局提供の石材を使って修復を完了した。修復に使用した石材・道具・技術は可能な限り伝統的なもの取り入れて行い古代技術研究にも迫ることができた。 壁画は赤・緑・黄色などの鮮やかな色彩を保つものの、その表面は埃や油煙による汚れで損なわれていたので、イタリアの壁画修復家の指導のもと薬剤によるクリーニングテストを行い、一部の強固な固油煙の汚れを除いて壁画を甦らせることが出来る可能性が強くなった。次年度には壁画のクリーニングを完了し、2年間の研究を基礎に、新たな壁画地下墓の修復研究展開する予定である。
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