研究概要 |
本年度は,インド洋モルディブ共和国にて,マーレ島北東部で発生した基盤サンゴ礁崩壊現場での潜水調査を実施し,サンゴ礁構造の記載と試料採取を行った。マーレ島北東部の礁湖側斜面は,最大傾斜(水深10〜30m)が68度の斜面が約40mまでつづき,それより緩斜面の礁湖底となる。急傾斜の斜面表面は非常に平滑で堅く固結している。崩壊は,幅60m深さ44mに達する。礁表面には多数の割れ目が認められた。崩壊地では礁面(水深3m)〜水深25mまでの礁湖側斜面の内部構造が確認できた。礁湖側斜面は表層から約2mの厚さで,きわめて硬い礁構造が認められた。この硬い礁構造は原地性サンゴの成長と膠結作用によって形成されており,その内側に枝サンゴ・卓状サンゴ礫と砂よりなる未固結の堆積物が詰まっている。堅固な斜面表層部が天然防護壁として礁内の未固結堆積物を保持する役割を果たしていることがわかった。新旧空中写真の比較と現地での聞き取りから,別の崩壊地を発見したため,そこでの潜水調査も行った。マーレ島ではビル・防波堤の建設や埋め立て,港湾整備に伴うサンゴ礁の開削などの開発が盛んに行われて折り,同様な崩壊が慢性的に起こっていた可能性がある。このような問題が生じたのは,世界的にもマーレ島がはじめてである。同国では崩壊地調査とあわせて津波被災調査に関するとりまとめ,首都マーレ周辺の国土開発の実態を視察も行った。 太平洋マーシャル諸島共和国マジュロ環礁では,環礁を切る航路用水路および礁原海側の淡渫跡に潜水し,サンゴ礁構造の記載と試料採取を行った。また,礁斜面から洲島・礁湖に至る環礁外縁部の断面測量と礫質ビーチロックの試料採取も行った。 また,採取した岩石試料観察のための分析電顕(JEOL JSM-6390AS)を岡山大学に導入した。
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