研究分担者 |
大塚 和夫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (70142015)
酒井 啓子 東京外国語大学, 大学院・地域文化研究科, 教授 (40401442)
黒木 英充 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20195580)
中田 考 同志社大学, 神学部, 教授 (40274146)
床呂 郁哉 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (90272476)
|
研究概要 |
本研究は,多くのムスリムの同胞意識を高める一方で,彼らの一部を自発的な武装闘争(テロ)にも駆り立ててきた/いる,ほとんど唯一の要因である「イスラームフォビア(ムスリムへの迫害・攻撃)」意識の広範な浸透の実態とその要因について,また「イスラームフォビア」として認識される具体的な事例は何か,を地域毎の現地調査を通じて明らかにすることを目的としている。この目的を達するため,本年度はオーストラリアを含む東南アジアを重点調査対象とし,インドネシア,マレーシア,フィリピン,タイ,シンガポール,オーストラリアの六か国でムスリム諸団体や個人へのインタビューと出版物の収集・分析を行った。その結果明らかになったのは,国や地方によって差はあるものの,東南アジアに住むムスリムの多くがアルカーイダ思想(ムスリムは攻撃されており,自衛のためにジハード=テロが必要であると説く)に通じる一定のイスラームフォビア意識,あるいはイスラエルや米国の軍事行動に対する強い反感を抱いており,それゆえ他の地域と同様,アルカーイダを含むジハード団体をテロリストというよりはレジスタンスと見ていること,また2008年末から1か月続いたイスラエル軍によるガザ攻撃が,地域を超えて人々の間に強いイスラームフォビア意識と怒りを産み出した事実であった。このほか,本研究では4年の研究期間内で「イスラームフォビア」意識の浸透度を定点観測し,浸透度が変化する原因をも明らかにしたいと考えているため,過去2年間に重点調査を行った欧米および中東における現地調査も継続した。なかでも,イスラエルと軍事同盟関係にありながら,同国のガザ攻撃後,突如大規模な反イスラエル・デモが起きたトルコではいわゆる「世俗派」の人々へのインタビューも含め,現地緊急調査を実施している。これら諸国にあっても,「イスラームフォビア」意識が弱まる傾向はなかなか見られない。
|