研究分担者 |
酒井 啓子 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (40401442)
黒木 英充 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20195580)
床呂 郁哉 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (90272476)
中田 考 同志社大学, 神学部, 教授 (40274146)
山岸 智子 明治大学, 政治経済学部, 准教授 (50272480)
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研究概要 |
本研究は,多くのムスリムの同胞意識を高める一方で,彼らの一部を自発的な武装闘争(テロ)にも駆り立ててきた/いる,ほとんど唯一の要因である「イスラームフォビア(ムスリムへの迫害・攻撃)」意識の広範な浸透の実態とその要因について,また「イスラームフォビア」として認識される具体的な事例は何か,を地域毎の現地調査を通じて明らかにすることを目的としてきた。この目的を達するため,最終年度は南アジア在住のムスリムおよびこの地域出身のムスリム移民を重点調査対象とし,インド,バングラデシュ,イギリス,フランス,アラブ首長国連邦,オマーン,バハレーンの七か国でムスリム諸団体や個人に対するインタビューと出版物の収集・分析を行った。その結果明らかになったのは,同じ南アジア系でもインド・バングラデシュ系はパキスタン・アフガニスタン系に比べれば,アルカーイダ思想(ムスリムは攻撃されており,自衛のためにジハード=テロが必要であると説く)につながるイスラームフォビア意識,あるいはイスラエルや米国の軍事行動に対する反感が著しく弱いという事実であった。バングラデシュ系もインド系も自国内の治安により大きな関心を抱いており,そのぶんムスリムを取り囲むグローバルな環境には目が向いていないことが原因と思われる。なお,2009年に至って米国本土在住のムスリムによる反米「ジハード」の試みがいくつか顕在化したことから,日本国内では急遽,米国における変化についてインターネット等を駆使して調査を行い,米国政府の中東政策を批判する「言論の自由」を持ち得ないムスリムのストレスがアルカーイダ思想に接近する契機となっていることを明らかにした。こうした研究成果は,全国紙の特集論説における問題提起や在京テレビ局の関連番組3本を監修(または出演)することで社会還元している。
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