研究概要 |
イスラーム圏アフリカにおける白色系民族と黒色系民族の紛争と共存のメカニズムを総合的に地域比較するなかで,宗教と民族の関係を宗教人類学的に考察することが本研究の全体構想であった。3年の研究期間の最終年度にあたる平成20年度は,継続して現地調査を実施するとともに,カメルーンでの国際ワークショップや『イスラーム圏アフリカ論集』II,III, IV, Vの刊行により,西アフリカ,東アフリカ,北アフリカそれぞれのイスラーム圏を総合的に比較研究した。本研究期間中に総計41回の海外調査を24ヵ国(西アフリカ:カメルーン,チャド,マリ,ギニア,セネガル,モーリタニア,ブルキナファソ。東アフリカ:ケニア,タンザニア,モザンビーク,ジンバブウェ,スーダン。北アフリカ:チュニジア,アルジェリア,モロッコ,エジプト。その他欧州,中東など)において実施した。うち分担者の調査が21回,協力者の調査が20回であった。大学院生を含む若手研究者が積極的に現地調査に参加したことより若手研究者の育成もなされた。本科研主催の4回の国際ワークショップ(名古屋×2,カメルーン×2)により,議論の深化,かつ国際的な研究者ネットワークの整備もなされた。研究成果は,学術論文や学会発表で国内外に公表されるとともに,本科研発刊の『イスラーム圏アフリカ論集』の中でまとめられた。5巻の論集(I.日野舜也『スワヒリ社会研究』, II.Djingui Mahmoudou Le Pouvoir, Le Savoir et la Richesse, III.嶋田義仁『レイ・ブーバ王国の研究』,『イスラーム圏アフリカ論集IV』,『イスラーム圏アフリカ論集V』)により,これまで日本人・アフリカ人研究者によってなされたイスラーム圏アフリカ研究の基本整備をしたうえで,イスラーム圏アフリカにおける白色系民族と黒色系民族の紛争と共存のメカニズムについて宗教人類学的に解明した。
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