研究課題
研究初年度の今年度は、7月に民族学博物館に研究分担者や研究協力者のほぼ全員が集合して研究打合せの機会をもち、今後の研究課題に関するディスカッションを通して、問題意識を共有した。その後、7月末以降年度末にかけて、分担者と協力者は各々のフィールドに赴き、それぞれ今後の本格的な調査に向けた予備調査を実施した。調査地と調査時期は以下の通りである。まず、研究代表の三尾は7月末から8月にかけてインド・ラージャスターン州ウダイプルで調査を行った。研究分担者の中では、高田が8月にバングラデシュのダッカ、森木が8月から9月初旬にネパールのカトゥマンドゥ、小牧が年末にスリランカのキャンディ、3月にインドのハイデラーバード、外川が年末年始にインドのコルカタとバングラデシュのダッカ、杉木が2月にスリランカのコロンボとインドのチェンナイ、押川が3月にデリーでそれぞれ調査を行った。また研究協力者として、小磯千尋(東海大学兼任講師)が8月末から9月にインドのムンバイ、中谷哲弥(奈良県立大学助教授)が9月にコルカタ、年末年始にデリー、池亀彩(エジンバラ大学大学院生)が10月から11月にデリー、2月にインドのマイソールとバンガロール、中谷純江(大阪外国語大学兼任講師)が年末年始にデリー、松尾瑞穂(総合研究大学院大学院生)がインドのムンバイとプーネで調査を行った。研究分担者のうち、海外調査を実施しなかった井坂と太田、八木は国内で文献調査を行い、過去の先行研究のレビューを行った。また研究代表を含む研究分担者の大半が、これまでの調査研究に基づき、今年度の調査成果も加えた形でそれぞれの研究成果を論文等に発表している。それぞれの調査地での実情はもちろん多様性に富むが、今年度の調査を通じて明らかになってきたことは(1)南アジアの北部と南部とで都市の基層構造に大きな差異が認められ、これにはイスラーム勢力の支配のあり方が大きく影響していそうだという見通しが得られた (2)その一方で、90年代以降の都市景観の変容には一様性が見られ、特に郊外と呼べる部分での基層構造や生活様式には類似性が見られることなどである。来年度以降は、南アジア地域内での都市の基層構造の地方性やその成立過程に関するさらなる分析の一方、現代の都市空間の変容を考える上で「郊外」がインドの都市住民にとってどのような意味を持つのかという点に焦点を置きつつ比較研究を続けることが当面の目標となる。また近年南アジアでも比較的入手が容易となってきた都市の精細な地図データをベースとした調査情報の整理と公開に関しても、他地域、あるいは他分野の研究成果との情報共有ということを念頭において、予備的な研究を行ってゆきたい。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (17件) 図書 (1件)
Hiroshi Ishijet al. (eds.) Political and Social Transformation in North india and Nepal.
ページ: 239-262
季刊民族学 120号(印刷中)
英語青年 152巻・10号
ページ: 9-11
Orient Vol.XLII(印刷中)
国立民族学博物館研究報告 31巻・3号(印刷中)
Hiroshi. Ishii et al. (eds.) Nepalis Inside and Outside Nepal.
ページ: 351-382
澤尾良隆先生退職記念論集(澤尾良隆監修) (印刷中)
ジェンダー人類学を読む
ページ: 70-92
歴史をどう書くか(甚野尚志編)(東大駒場連続講義)
ページ: 178-199
史料学入門(東京大学教養学部歴史学部会編)
ページ: 167-185
ワードマップ・イスラーム(小杉泰, 江川ひかり 編)
ページ: 56-61
ページ: 69-74
キリスト教と文明化の人類学的研究(杉本良男編)
ページ: 371-420
季刊民族学 119号
ページ: 58-63
宗教研究 348号
ページ: 25-43