研究概要 |
サンゴ骨格には熱帯海洋の気候変動が月から週の時間分解能で記録されているため,年輪の分析することによって,地球規模の気候に大きな影響を与えるENSOなどの大気-海洋系変動の海洋環境への影響を復元できる。本研究は,パラオ諸島において発見された高さ4.7mという巨大ハマサンゴ群体のコアを採取,分析し,過去450年間の海洋環境変動を復元する。450年もの長期間の海洋環境変動を,サンゴ年輪によって復元した例はない。16世紀の小氷期以降の水温,塩分の連続的記録が,地球規模の気候変動を駆動する熱帯西太平洋から得られることにとよって,気候変動メカニズムの解明に重要な束縛条件を与えることができる。さらに,長期的な復元結果を,ENSOの長期シミュレーションと比較することによって,モデルの評価を行なう。平成19年度は,前年度に採取したサンゴ骨格コア試料をスラブ状にし,X線写真より年輪を認定した後,東京大学の質量分析装置によって,酸素安定同位体比測定を500試料(約50年分)行なった。また,水温循環のためのSr/Ca比分析を国立環境研究所において行った。これらの分析結果は,現在に近い年輪記録と気象,海象データを比較し,過去50年間の水温,塩分変動を月単位で復元した。現在の気象,海象データについては,群体のある地点と海洋の物理量を観測し,群体のある海洋条件のパラオ近海における代表性を評価するとともに,大気-海洋結合モデルによるシミュレーションの条件として利用した。シミュレーションについて,大気-海洋結合モデルSINTEX-F1を改良したUTCMで,現在の海洋環境を復元するテスト・ランを行なった。
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