研究概要 |
サンゴ骨格には,熱帯の海洋気候変動が月から週の時間分解能で記録されているため,年輪の分析によって熱帯の大気-海洋変動(ENSOやIOD)と地球温暖化の関係などを長期にわたって復元することができる.本研究では,パラオ諸島において発見された巨大ハマサンゴ群体のコアを採取・分析して,ENSOなどの長期変動を復元することを目的としている.同サンゴ年輪は約200年分の年輪記録をもっていることが明らかとなったが,本研究ではこれまでに100年分までの酸素同位体比分析と,Sr/Ca分析を終えた.2つの分析を組み合わせることによって,水温と塩分の変動をそれぞれ独立して抽出することができる.その結果,パラオではとくに強いエルニーニョ時に(降水量の減少によって)塩分が高くなることがわかった.さらに,太平洋の様々な地点から得られたサンゴ年輪記録を比較することによって,太平洋中央部では20世紀後半を通じて低塩分化(湿潤化)の傾向が認められることがわかった.これは最近発見されたエルニーニョモドキ(太平洋中央部が高温・高降水)が温暖化に伴って強化したことと一致する.本研究では,インド洋西のケニヤから採取したコアの分析を完了し,過去115年間のインド洋ダイポールモード(IOD)の長期復元に成功した.その結果,IODの頻度が20世紀末になって2~3年と頻発していることが明らかになった.本研究によって,ENSOやIODなどの海洋気候変動のモードが,長期的な地球温暖化という気候変化によってシフトしていることが明らかになった.
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