研究概要 |
南ア金鉱山内の地下3.5km地点に展開したAE観測網の観測範囲をやや拡大して25kHzまで帯域を持つ加速度計も設置して観測を継続した。これらの観測でとらえられた多数に微小破壊イベントの周波数成分を系統的に分析し,高周波数弾性波の透過に対して地質境界がwave guideのような役割りをはたしていたらしいことがあきらかになった.また,能動弾性波の繰返し照射試験もこころみたが,装置が故障し失敗した. 観測網内でおこった,差渡し100mの断層破壊をおこした地震について数万個の余震をとらえたが, これと鉱山会社のルーチン観測網の検知限界との比較から,われわれの観測は, 10cm程度の非常に小さな破壊までとらえていることが示唆され,これは,周波数成分の解析結果とも調和的である. また, これらの微小破壊の空間分布は,本震が地質構造の境界ではなく, 主に単一の岩相ブロック内部での破壊であることを示唆した. 鉱山会社のルーチン観測網の計器方位を補正しておこなった波形解析によっても,これと一致する断層面がえられた. さらに, われわれのAE観測網のデータから, 本震より数ヶ月前から, 将来の本震破壊面のほぼ全体にわたって明瞭に集中した微小破壊活動を起していたことがわかった. また, これ以外にもいくつかの微小破壊活動のクラスターがみられたが,これらは, 本震断層から相当はなれているものでも, 本震の発生後に活動が活発化した. これらの事は, 天然の地質構造には, 小さな応力変化に敏感に反応して微小破壊を起す物理的構造をもつ部分が存在することを示唆する.
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