研究概要 |
1)フィリピン・Mindoro島北端のPuerto Galera湾およびその周辺海域(主たる負荷:観光開発負荷),同・Luzon島中西部のBolinao沿岸海域(同:水産養殖負荷),同・Metro Manila南隣のLaguna湖(同:周辺流域からの流入ならびに養殖負荷)において,物理・生物・化学過程を解明するための現地調査を実施した.2)各水域での流動物理や水質動態の定量的評価・予測のための数値モデル開発をすすめ,モデル検証を上記の観測データ等によって行った.3)沿岸生態系への陸源環境負荷を合理的に評価するために, regional scale土壌流入量評価モデルシミュレーションを実施し,長期連続計測データと比較検証した.4)陸源負荷のうちの表層土壌流入に関して, local scaleでの沿岸域における移流・拡散・堆積・再浮上に関するモデル開発を行うとともに,現地データとの比較によってモデル検証を行った.さらに,同モデルに基づく栄養塩負荷分布評価モデルの開発のための検討を行った.5)環境収容力の合理的評価法確立のためのマテリアル・フロー分析のための調査をフィジーにおいて行った.また,フィリピンのイロイロ等を中心に,地方分権型・住民参加型の総合的沿岸域管理に取り組む地域組織の構成と動向,沿岸域資源の持続的利用をはかる地域住民の生計戦略について調査・分析を行った.コミュニティー・ベース型組織が幅広く活動して地域では,ソーシャル・キャピタルのあり方が,住民の資源利用及び生計活動に大きな影響を与えていることが明らかになった.6)上記2),3),4)で開発した数値モデルをベースとして,そのシミュレーション結果を地域コミュニティーによる沿岸生態系保全の現場に直接反映しやすい沿岸生態系環境ストレス悪化ポテンシャルマップの形で統合表示したり,様々な保全政策オプションの有効性を定量的に評価するための意志決定システム(DSS)構築のための基本スキームについて検討した.また, DSS構築にあたって,潜在的ユーザである地域コミュニティーの様々なステークホルダーの意見・要望を反映させるための地域ワークショップを開催した.
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