研究概要 |
マレーシア・サバ州の低地(標高300m付近)と山地(標高1700m付近)のそれぞれにおいて、土壌ポドゾル化の異なる段階にあると思われる熱帯降雨林に長期観測試験地を設定した。各サイトの有機物の表層集積度、土壌酸性度、それにともなう鉄とアルミニウムの溶脱度(ポドゾル化)を調べるため、各試験地に3〜4つの土壌断面を切り、それぞれの断面の層位を記載し、層位毎に土壌サンプルを採集した。採集した土壌サンプルについては、、定法により、鉄、アルミニウム、リン酸イオンの溶脱と集積の程度について解析をした。また、土壌リン欠乏への主要樹種の生理生態学的な適応機構を明らかにするために、まずリン吸収効率に関わる細根の生理的な適応について調べた。山地系列において、1haのプロットでの相対胸高断面積(RBA)上位樹種を,ポドゾル化が進行した、土壌リン(全リン現存量)の少ないサイトから8樹種多いサイトから5樹種選んだ。それらの樹種の実生(平均樹高30.6cm)から,根を採取して,一定のpHで根の酸性リン酸分解酵素活性を測定した。さらに、その根をスキャナで画像化してコンピュータで根長を測定した。根の表面積の指標には根長を乾重で除したSpecific Root Length(SRL)を用いた。優占種のSRLを種のRBA/合計RBA比で重みづけした結果,SRLは土壌リンの少ないサイトでより高かった。また,酸性リン酸分解酵素活性とRBAの間には土壌リンの少ないサイトで有意な正の相関があったのに対し,土壌リンが多いサイトでは有意な負の相関があった。以上のことより,低リン環境に生育する樹木の根は表面積が広い,あるいは酸性リン酸分解酵素活性が高いという適応機構があると考えられた。
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