研究課題/領域番号 |
18255003
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北山 兼弘 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (20324684)
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研究分担者 |
岡田 直紀 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40335302)
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キーワード | 熱帯降雨林生態系 / 土壌リン / 生態系 / 生物地球化学 / リン利用効率 / 生理適応 / ヒース林 / ポドゾル |
研究概要 |
まず、ボルネオ島熱帯降雨林の樹木個葉のリン利用効率特性を地理的スケールで明らかにするために、これまでにボルネオ島の野外調査から得られたデータおよび他地域の研究文献を基に、地球規模の個葉データセットを構築した。このデータセットを使い、土壌リン濃度と最大光合成速度及び個葉のリン濃度などを比較した。その結果、ボルネオ島熱帯降雨林の低リン土壌に生育する樹種は、濃度あたりの光合成速度(光合成リン利用効率)が他の気候帯の樹種よりも高いことが示された。また、光合成リン利用効率の増加には、葉のリン濃度の低下が大きく寄与することが示された。次に、光合成リン利用効率の増加の生理学的なメカニズムを明らかにするために、ボルネオ島キナバル山の土壌リン可給性が異なる3つの林分間で、葉のリン画分(化学種)を比較した。それぞれの林分において、複数の樹種から林冠の陽葉を採集し、直ぐに凍結乾燥させ、サンプルを日本に持ち帰った。これらのサンプルについて、葉リン画分をKedrowski (1983)の手法を用いて4種類(脂質・核酸・糖リンなどの易溶態・その他)に分画し、それぞれの濃度を決定した。その結果、脂質を除く3つの葉リン画分において、低リン土壌の林分ほど画分中リン濃度が低いことが解明された。従って、低リン土壌に生育する樹木は、核酸および糖リンなどを同時に減少させてリン可給性の低下に応答していることが明らかになった。光合成リン利用効率の最大化は、これらの画分変化と関係していることが示唆された。
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