ボルネオ島は高温多湿の気候にあって水分や気温は制限要因とならないが、堆積岩起源の古い土壌が卓越するために熱帯降雨林にはリンの制限が強くかかっていると思われる。ボルネオ島でのリン制限は、繁殖のような個体・種レベルのプロセスから、栄養塩循環のような生態系レベルでのプロセスまで幅広く見られはずである。しかし、一見するとボルネオ島の熱帯降雨林のバイオマスや生産性は高く維持され、上記の予測には従わない。これには、樹種レベルでのリン利用効率最適化に加え、生態系内のリン内部循環効率の上昇が同時に効いていると思われる。私たちは、ボルネオ島を例にとり、リン制限のかかった内陸性熱帯降雨林が広域に存在することを証明したい。また、リン欠乏への適応が植物の群集組成を支配していることを、植物組織~個体~生態系レベルの適応を明らかにすることで証明したい。生態系レベルでの適応機構には土壌微生物群集の機能も含めて考えたい。
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