平成20年度の現地調査として、北極域については8月にスピッツベルゲンにおいて氷河上に生息するシアノバクテリアおよび従属栄養微生物などの試料採集を行い、その後、実験室にて系統解析等を行った。このとき、現地での便宜を図って頂いたノルウェー極地研究所には平成21年3月に訪問し、調査の概要報告と今後の研究協力に関する打合せを行った。8月の北極調査で特筆すべきは、平成14年度に地球温暖化防止活動環境大臣表彰された建築家と、日本科学未来館のイベント企画担当者に参加してもらうことで、国際極年(IPY)の掲げる目標の一つであるEOC(education、 outreach、 communication)の「O、 C」(普及・啓蒙面)の昂揚に貢献したことである。これは昨年度グリーンランド調査に中高一貫校の教諭に参加してもらうことでEOCの「E」(教育面)を昂揚したことの拡充活動であり、IPYの科学面だけでなく社会的な貢献をも果たしたといえる。 南極域については12月にスペイン観測隊に参加し、南極半島沖にあるリビングストン島において現地調査および試料採集を行った。それらの試料の分析は現在鋭意進めているところである。 本研究はIPY中核計画MERGEの推進という目的を有しており、国際的ヘッドクォーターとして計画全体をとりまとめている。この一環として、5月にカナダ国バンフ市で開催された第三回国際極地高山微生物会議、6月にロシア共和国サンクトペテルブルク市で開催された南極科学研究委員会(SCAR)の総会などでMERGE会議を主宰し、各国の進捗報告や今後の共同について討議した。
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