研究概要 |
熱帯林の減少と劣化は地球環境問題として重要視されており、なかでもゴムプランテーションの造成は、熱帯林減少の主因として問題視されてきた。この背景には、ゴム樹液生産のための「農園」としての位置づけしかなく、ゴムプランテーションの有する「森林・木材資源」としての機能が軽視されている現状がある。 ゴム樹液の採取を終えた25 年生~30 年生の林木は、以前は無用とされていたが、1980年代以降は家具材等として利用されるようになり、日本でも「ラバーウッド」として広く流通している。しかしながら、「ラバーウッド」はあくまでゴム採取後の「廃材」として、安価で非効率的に取引されているのが現状であり、高炭素固定能を有する有用早生樹種としての位置づけは確立されていない。また、ゴムプランテーションの存在が、地域住民の生活様式や地域経済にどのような効果をもたらしているのかも明らかにされていない。 そこで、本研究ではゴムプランテーションおよびラバーウッドを従来の「農園」および「廃材」の視点ではなく、「森林・木材資源」として捉え、その新たな環境保全機能(炭素固定, 天然林保全)と社会・経済的機能(木材生産、地域経済)を評価し、これらの「森林・木材資源」としての機能と従来のゴム樹液生産機能を調和させるための多機能調和型経営システムのあり方を提示することを目的とし、具体的には以下の5つの内容を実施する。 (1) 炭素固定機能評価>ゴムノキの基本的な生産構造と加齢に伴うバイオマス成長特性を伐倒・重量測定より明らかにし、ゴムノキの炭素固定能を評価する。また、植栽密度試験を実施し、樹液採取量および植栽密度が炭素固定能に及ぼす影響を明らかにする。 (2) 天然林保全機能評価>集落でインタビュー調査を実施し、ゴム園の存在が地域の森林資源利用形態にどのような差異をもたらしているのか、そして近隣の天然林保全に貢献しているのかを明らかにする。 (3) 木材生産機能評価>伐倒調査により胸高直径と樹高を変数とした立木材積式を作成する。また、木材性質の個体間・個体内変動および加齢や植栽密度による変動を明らかにし、林齢や施業方法に応じた材積予測式、材質変動推定式を構築する。 (4) 地域経済効果評価>ゴム園の従業者や経営者および地域住民や関連行政官へのインタビュー調査を実施し、ゴム園が地域住民の生活様式に与える影響や地域経済効果の現状を評価する。そして、ラバーウッドが地域において家具材や薪炭材として効率的に有効利用されるための流通・生産システムのあり方を提示する。
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