研究課題/領域番号 |
18255011
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
石田 厚 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 室長 (60343787)
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研究分担者 |
田中 浩 独立行政法人森林総合研究所, 森林植生研究領域, チーム長 (80343789)
高橋 正通 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 領域長 (40353750)
太田 誠一 京都大学, 農学部, 教授 (10346033)
神崎 護 京都大学, 農学部, 助教授 (70183291)
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キーワード | 乾季落葉樹 / 乾季常緑樹 / 熱帯季節林 / 光阻害 / キャビテーション / 水利用 / 光合成 / 土壌栄養塩 |
研究概要 |
タイは11月から3月にかけてほとんど雨の降らない、明確な乾季が見られる。乾季に落葉する落葉樹林は、樹木は葉から多くの水を失いやすいため、その葉を落とすことによって乾燥をしのいでいると考えられる。しかしタイでは、強い乾季がある場所であっても、常緑樹林も乾季落葉樹林も見られる。年間を通じて葉を維持している常緑樹では、乾季でいかに水を利用しているのか、また気孔が開けないために起こりうる光阻害に対し、どのように順応しているかといった仕組みはよくわかっていない。そこで常緑樹林も乾季落葉樹林との間で、土壌の栄養塩や粒子分布といった立地特性を比較するとともに、雨季から乾季にかけて、どのように葉のガス交換機能が変化するか、またガス交換機能が低下する乾季に、どのように水分利用特性や光阻害耐性機能が変わるかを比較した。土壌の栄養塩濃度は、乾季落葉樹林で常緑樹林よりも高く、特にサケラートで落葉樹林でより砂質土壌であった。12月の乾季前半、落葉樹でもまだ多くの葉を樹冠に着けていた。12月、落葉樹の葉では光合成速度は雨季の約半分に低下していたが、日最大気孔コンダクタンスは雨季と差がなかった。一方常緑樹の葉では、12月、光合成速度も日最大気孔コンダクタンスとも、雨季よりもかなり低下していた。また乾季の常緑樹の葉では、光阻害耐性として知られているキサントフィルサイクル色素の上昇が見られ、光阻害を回避するために多くのコストをはらっていると予想された。さらに乾燥がすすみ2月に入ると(乾季後半)、落葉樹では葉を落としていたが、一部の樹種では新葉や花芽の展開の開始が、降雨以前にも関わらず見られた。今後さらに立地条件の調査を進めるとともに、雨季直後から雨季中盤にかけての、光合成や水利用特性の季節変化を調べていく。
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