研究課題
東南アジアの明確な乾季のある低地熱帯季節林では、似た降水量や降雨の季節パターンを持つにも関わらず、落葉樹林も常緑樹林も見られる。温帯の落葉樹では、葉の無い冬季に木部道管の水切れ(キャビテーション)が生じていることが知られている。しかしタイの常緑樹や落葉樹では、乾季に木部キャビテーションが進行し、枝や葉の通水性が乾季に低下するという証拠は得られなかった。常緑樹や落葉樹は、雨季の始まる前の最も厳しい乾燥が起こる乾季に新葉が展開していた。この乾季の新葉展開は、木部キャビテーションが乾季に進行しないことから、可能になってと考えられた。また乾季の間に生じる旧葉の落葉時期や新葉の展開の時期は樹種によって大きく異なり、落葉期間も樹種によって異なっていた。その為宇宙空間から見るリモートセンシング法では、落葉樹では乾季でもNDVI(植生指数)の低下は乏しく、落葉樹でできている森林にも関わらず、常緑樹林帯として誤認されていた。葉の生理的には、落葉樹の方が常緑樹よりも気孔開度は高かったが、葉や枝の通水性や、葉の水ポテンシャルといったその他の水利用特性は、常緑樹と落葉樹の間に差がある訳ではなく、樹種に依存した性質であった。乾季は、気孔開度が低下するため、光阻害とよばれる、強い光によって葉生理機能の低下もたらす危険が増大する。一方この光阻害を回避する生理メカニズムは、常緑樹と落葉樹の間で分かれていた。すなわち常緑樹の葉では乾季にキサントフィルサイクル色素を増やし、過度の光エネルギーを熱として放散させていた。また落葉樹の葉では、乾季に光呼吸の割合を増大させることが、光阻害回避の主要な生理メカニズムであった。
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