研究概要 |
申請者らは日本において牛白血病の発症に対して抵抗性と感受性を規定するウシMHC(BoLA)クラスIIアリルを発見した。本研究課題では、乳牛と肉牛の生産では世界の25%~40%を占めるアメリカ大陸の主要な畜産国を対象にして、疾患感受性を規定する規定するBoLAクラスIIアリルの分布状況をPCR-SBTを調査した。本年度は、チリにおいて、21牧場より942頭のウシ血液を採血し、DNAの収集を行った。採材したのは、Black Angus, Red Angus, Chilean Wagyu, Simmental, mixed Hereford, Black Holstein, Red Holstein, Jersey, Ovelo Colored, Ovelo Negro, pure Herefordの11品種である。回収したDNAを用いて、現在BoLA-DRB3アリルの同定とBLV感染率の解析を行ったところ、各アリルの頻度は、品種ごとに大きく異なることが明らかとなった。一方、既存のPCRによる牛白血病ウイルス(BLV)プロウイルスの検出を行ったところ、感度に問題があることが判明した。そこで、これらのサンプルを用いてBLVのPCRによる検出法を新たに構築した。この方法は、BLV-LTRを1回のPCRで増幅するため、従来からの課題であったコンタミネーションのリスクを大幅に軽減することができるとともに、感度も大幅に上昇させることに成功した。この方法を用いて、チリ・ボリビア・アルゼンチン・パラグアイ・ペルーおよびアメリカ合衆国のBLVの感染状況を調査し、BoLA-DRB3アリル頻度との相関性を明らかにした。一方、国内の感染牛を用いた解析により、BLVの病態が進行した個体のウイルスロードは高い傾向にあることが明らかとなった。このことは、病態進行に感受性の個体は、その個体自身の発症の危険が増大するだけでなく、感染拡大にも寄与することが予想される。このことから、発症感受性アリルの同定は世界レベルで非常に重要であることが明らかとなった。
|