研究概要 |
本課題の目的は東シベリアのカラマツ林を対象に、(1)火災強度と土壌水分変化の関係解明、(2)火災による土壌水分の変化と炭素循環の関係解明、(3)分光放射特性による光合成の土壌水分に対する環境応答の推定、以上3テーマにより、近接リモートセンシングによる光合成と土壌水分ならびに温暖化ガス放出の間接推定を行うことである。 (1)2004年に人為的な火災処理を施したスパスカヤパッド実験林において,生長期間に,火災区,対照区の両区で深さ50cmまでの土壌水分モニタリングを行った。降雨量よりも蒸発散量が卓越するという当該地の水収支を明らかにするとともに,火災区と対照区での土壌水分動態の相違を捉えることができた。その相違の要因は,主に蒸発散量の相違によるものであったが,カラマツによる吸水量が両区で異なる可能性も示唆された。 (2)森林撹乱の後に永久凍土が融解したサーモカルスト地形のアラスでは、中央部に池があり、周りを森林で取り囲まれ、その中間は草地として利用されている。直径1kmほどのアラスの森林側の乾燥した草地と、池との中間の草地で、生長期間炭素収支を測定した。微生物呼吸量(単位:Mg C ha^<-1>)は乾燥草地で1.81、中間草地で1.89であった。生態系純生産量NEPと純生物総生産量NBPは乾燥草地で吸収(0.420、0.162)、中間草地で放出(-0.581、-1.21)であ、牧草収穫がアラス草地の炭素吸収を減少させる要因であった。 (3)カラマツ成熟林において2004年から開始した灌水実験により、土壌水分の湿潤化が林冠の個葉の光合成能力を向上させることが示され、当該地域の寡雨条件が林冠の光合成能力の制限要因であることを明らかにした。カラマツ成熟林において2004年から開始した地表火実験では、林冠の個葉の光合成能力が火災後3年目に向上していることが明らかになり、2年目に確認された光合成速度の低下に見られた火災の負の効果に対して、成長促進の正の効果に3年目で逆転していた。
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