研究課題
本課題の目的は東シベリアのカラマツ林を対象に、(1)火災強度と土壌水分変化の関係解明、(2)火災による土壌水分の変化と炭素循環の関係解明、(3)分光放射特性による光合成の土壌水分に対する環境応答の推定、以上より、近接リモートセンシングによる光合成と土壌水分ならびに温暖化ガス放出の間接推定を行うことである。火災強度が強いほど、土壌水分量が多かった。蒸発散速度は火災強度が強いほど高かったので、植物による土壌水分の消費など他の要因によって、火災による土壌水分上昇が生じていたと考えられた。また、2007年度の上半期は降水量が例年になく多く、森林の一部では土壌水分が過飽和の状態になり、そこではカラマツ成熟木の針葉が黄変していた。このため、土壌水分の過飽和はカラマツ成木の成長阻害要因になっていることが示唆された。森林の攪乱跡地に生じると考えられているアラス生態系を対象に、異なるアラス形成段階のサーモカルスト3地点及び成熟したアラスの沼地でCH4放出を測定した。各沼地からのCH4放出量と凍土中のCH4蓄積量の比較から、凍土融解に伴う「古い」CH4の放出よりも、凍土融解により形成された沼地で生成される「新しい」CH4の放出が重要と考えられた。アラスよりも形成途中のサーモカルスト沼地でCH4放出が大きく、融解した凍土から放出された易分解性有機物のCH4生成への寄与も示唆された。火災区では土壌の過飽和によると思われる葉の黄変とともに光合成能力の低下が認められた。葉の分光放射特性の解析から、NDVIと光合成能力に正の相関が見られ、分光放射特性を用いた近接リモートセンシングによる光合成能力の推定法が有望であることを明らかにした。
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Journal of Geophysical Research-Biogeosciences 113
ページ: G02002,doi: 10.1029/2007JG000521