研究課題/領域番号 |
18255014
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 周一 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (10333634)
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研究分担者 |
波多野 隆介 北海道大学, 大学院・農学研究院, 教授 (40156344)
斎藤 秀之 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教 (70312395)
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キーワード | 東シベリア / 森林火災 / 地球温暖化 / 炭素固定機能 / 土壌水分 / 土壌呼吸 / 温暖化効果ガス / 個葉の分光放射特性 |
研究概要 |
研究目的は東シベリアの力ラマツ林を対象に、(1)火災と土壌水分変化の関係、(2)土壌水分の変化と温暖化効果ガスフラックスの関係、(3)分光放射特性による光合成の土壌水分に対する環境応答の推定法を解明することある。 2004年に開始した地表火実験では、2007年にカラマツの葉に黄化が現れて2008年に枯死が認められた。この枯死原因は、2006年がらの降水量増加による土壌水の過飽和であると考えられた。その判断理由は、火災区の土壌水の飽和度が0.92に至り、過剰な土壌水が根の酸欠を引き起こして吸水を阻害したと考えられたこと、他の衰退林分で見られた土壌水分の飽和度も0.8を超しており、カラマツが健全に生育できる土壌水の飽和度の閾値が0.8付近にあると考えられたことである。火災処理区で土壌水が過飽和になった理由は、火災が窪地を形成するため融雪期に集水地となったことが考えられた。 カラマツ林、火災跡地、伐採跡地において土壌のCO_2およびCH_4, N_2Oフラックスを比較した。生長期間を通じ、CO_2フラックスは地温により制御され、Q_<10>はカラマツ林の値(4.35)に比べ、火災跡地、伐採跡地でそれぞれ1.69、2.09に低下し、根呼吸の割合低下と微生物呼吸の優占が示唆された。カラマツ林および伐採跡地のCH_4フラックスは地温、土壌水分との関係が明確ではなかったが、火災跡地のCH_4吸収は地温の上昇、土壌水分の低下にともない促進された。N_2Oフラックスを制御する要因は明確ではなかったが伐採跡地では高水分状態時に上昇する傾向にあった。 カラマツ林冠から採取した葉の室内実験では、葉の含水率と分光放射特性であるWI(Water index)に相関が見られた。しかし、カラマツ成熟林の樹冠において、実際に発生した土壌の乾燥条件による葉の光合成低下は葉の水ポテンシャル低下をともなわなかった。よって、葉のWIは乾燥による光合成低下をモニタリングする分光放射パラメータとしては実用的でないと考えられた。
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