研究概要 |
本研究はマダガスカルおよびケニアの伝承薬用植物,未利用薬用隠花植物分布調査と人体に優しい医薬原料の供給および医薬品を創製することを目的とし,本年度はマダガスカルにて採取、購入したCannelaceae科Cinnamosma madagascariensisと数種の苔類の薬理活性成分の単離,構造決定,薬理活性試験を実施した。C.madagascariensisはC.fragrans,C.macrocarpaと同様,強烈な辛味を有する。本辛味はセスキテルペンジアルデヒドのシンナモジアールおよびポリゴヂアールに起因すること,さらに2種の新規ドリマン型セスキテルペン,シンナマジン,シンナマージアール11α,12β-ジメチルアセタール単離,構造決定した。また多量のマニトール,δ-トコフェロールを含有することを見出した。ゼニゴケ類から大量に得られるマルカンチン類およびサワラゴケから得たセスキテルペン二量体マスチゴフォレンCは,強力なNO産生抑制活性を示した。またマルカンチンAは肝内胆汁うっ帯症治療剤として有用なFXR(ファルネソイドXレセプター)転写活性調整剤として有用であることも見出した。ケビラゴケからえられる2-ゲラニル-3,5-ジヒドロキシビベンジル,ムチゴケの一種Bazzania nitidaからのミルタイラン型セスキテルペンカフェー酸エステル,Thysananthus spathulisからのクレロダン型ジテルペンエポキシド,キリシマゴケから得られるヘルベルタン型セスキテルペノイドもNO産生抑制活性を示した。また2種のハネゴケPlagiochila bartri,P.terebransよりトリファラン型セスキテルペン,ハリマン型ジテルペンおよびマルカンチンCおよびHを単離した。これら結果は6報の論文として掲載され,内外で9回の口頭発表を行った。本年度はケニアの各地で暴動が起き,情勢不安で現地入りすることはできなかったが,研究代表者と当研究室の元博士研究員Liva Harinantenaina氏(現広島大学薬学部助教)がマダガスカル首都にて生薬,精油の市場調査を行った。特にCannelaceae科Cinnamosmafragrans,C.maorocarpa,C.madagascariensis樹皮と葉,ジンチョウ科の一種の樹皮,セリ科のCeitella asiaticaが大量に市販されていた。また精油は主にバニラ,ジンジャーが多く見られた。これらすべてを購入,空輸後,エーテルおよび水、メタノールで抽出し,平成20年度の研究にそなえている。
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