研究概要 |
[1]石川県輪島市郊外(旧国設酸性雨観測所)で過去3年間にわたり1週間毎にハイボリュームエアーサンプラーでフィルター捕集した大気浮遊粉じんについて,ニトロ多環芳香族炭化水素(NPAH)分析を試みた。(1)従来のオンライン濃縮-化学発光検出HPLCの分析条件の一部改良して,2-ニトロフルオランテン(2-NF),2-ニトロピレン(2-NP)及び1-ニトロピレン(1-NP)の同時高感度分離分析法を開発した。フィルター捕集粉じんをベンゼン-エタノールで抽出した液を洗浄,酸アルカリ洗浄したのち後に本法を適用ところ,これ等3ニトロ多環芳香族炭化水素(NPAH)が同定・定量できた。(2)3NPAHの総濃度は毎年11月〜3月に高い季節変化を呈した。(3)捕集空気塊毎に後方流跡線解析法を適用した結果,総NPAH濃度が高い期間は,殆ど中国東北地方を経由していた。(4)この期間の[2-NFR]/[[1-NP]比は5未満と小さく,大気中二次生成の影響は小さいと推定された。(5)この期間の[1-NP]/[[ピレン(Pyr)]比は,金沢より中国東北地方の代表的都市瀋陽の冬季の大気試料の値に近似していた。以上の結果から,中国東北地方の都市で冬季に石炭燃焼にともなって大量に大気中に放出された1-NPだけでなく,当地の大気内で二次生成した2-NF,2-NPPAHも,冬季の北西風に乗って日本海を越え,わが国まで長距離輸送されていると考えられた。[2]金沢市で過去10年間にわたって毎季節毎にハイボリュームエアーサンプラーで捕集した大気紛じんの多環芳香族炭化水素(PAH)及びNPAH濃度を測定した結果,前者は50〜75%,後者は85%減少し,SPM(22%)やCO(35%)に比較して減少割合が大きく,自動車のPM規制や排ガス規制の効果は,これ等よりPAHやNPAHに顕著に現れていた。
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