研究概要 |
隠れ部分群問題と呼ばれる量子アルゴリズムの中心的話題について量子情報理論的観点からの考察を与えた.結果として,有限群の広いクラスにおいて隠れ部分群問題を解くための量子状態のサンプル数の情報理論的に緊密な上下界を与えることができた.また,一般の量子状態識別問題の基礎的事項,特に量子状態の直交性と一次独立性の関係について考察を行った.結果として,量子状態の候補集合が一次独立となるための直交性条件について一般の量子状態及び二元量子状態について必要十分条件を得ることができた.量子計算量理論的な観点から量子一方向性関数および置換の存在性に関して特徴付けを行った.具体的には,量子一方向性置換の存在性と,量子計算量クラス間の分離が等価であることを導いた.一方向性の定義として関数の逆計算に量子計算機を用いても計算困難であることは自然であるが,順方向計算に量子計算を認めるか否かは環境に依存する.順方向に量子計算を認める場合と認めない場合で,分離する量子計算量クラスが異なることを示すことができた.また,複数証明者の量子対話証明については,証明者を1名追加することで100%の完全性を保ちつつ並列化し1ラウンド化することがすることに成功した.さらに,複数の証明者の間にエンタングルメントを持つ局所的でない戦略の限界を考察するための新手法を開発した.この手法を利用して,計算量クラスNEXPは3-証明者,1-ラウンド,バイナリ型の対話証明(100%完全性および1-2^{-poly})を持つことを導くことに成功した.
|