研究概要 |
当該研究は,(1) 量子情報理論的概念を計算量理論的立場から解析し, 量子情報理論への新展開を与える,(2) 量子情報理論と量子計算量理論の双方の特長を生かした量子暗号の要素技術を確立する,(3) 量子計算機科学, 特に量子計算量理論に量子情報理論的手法を応用し, 個々の計算機科学的問題の解決につながる新しい統一的な視点や技法を追求する, ことを目的とする. 以下に具体的な計画概要を方向性毎に記載する. (1) の方向性の研究として主にエンタングルメントや量子通信路の計算機科学的性質の解析に焦点を当てる. エンタングルメントは量子情報科学の根底をなす最重要概念の一つであるが, その性質は未解明の部分が非常に多い. 従来のこの方面の研究の殆どは情報理論の立場からなされている.当該研究では, 対話証明におけるエンタングルメントの有無と検証能力の関係などを通じて, エンタングルメントを従来とは異なる視点から計算機科学的に解析する. (2) の方向性の研究として主に量子一方向性関数の性質解明と量子暗号への応用に焦点を当てる. 一方向性関数は現代暗号における最重要概念の一つであり, 当該研究では, 量子情報理論的な性質を考慮することで従来結果を発展させて一般の量子一方向性関数の性質の解明を目指し, さらに量子情報理論的な性質も考慮することにより, 量子一方向性関数の候補の発見や量子暗号プロトコルへの応用へ役立てる. (3) の方向性としては主に量子情報理論における測定理論の量子アルゴリズムへの応用に焦点を当てる. 量子計算が対象にしている問題は多くの場合, 本質的には与えられた量子状態が何であるかを同定する問題に帰着される. 量子情報理論における最適測定を利用することで効率の良い量子アルゴリズムの設計成功例が散見される. 当該研究では最適測定設計の理論を機軸とした新しい量子アルゴリズムの設計・その手法の確立を目指す.
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