研究概要 |
WWWのようなソフトウェアシステムばかりでなく,群ロボットシステムのような自律分散機械システムなどを含めて,通信機能を有する複数の自律的計算主体(本申請ではエージェントと呼ぶが,対象によって計算機,プロセス,ロボット.ニットなどと呼び分けられる)から構成されるシステムを広く分散システムと呼ぶ.分散システムのエージェント数は既にギガで測られる時代にあり,テラの時代が始まろうとしている.従来,分散アルゴリズムの設計問題はグラフ問題や2次計画問題へ帰着することが有効な手法と考えられて来た.しかし,動的な巨大分散システムでトポロジーを知ることの無謀さや故障に対する対処の困難さなどの論点を棚上げにし,さらに帰着された問題が(NP-困難ではなく)Pであったと仮定しても,本研究が対象とするような,たとえばノード数10^<10>程度の巨大なネットワークのグラフヘの帰着がそもそも非現実的なのである.この事実はグラフ問題や数理計画問題への帰着という方法論に代わる新しい方法論が必要であることを示している. 本研究では三つの研究課題を設定した.まず,センサーネットワークにおける信頼度と消費エネルギーのトレードオフを検討することがあった.この目的を達するためにセンサーネットワークに対する二つのプロトコルを設計した.それは,従来のように固定されたネットワーク構造に基づくものではなく,メッセージの伝達が確率的な議論に基づいて保証されるようなものであり,その信頼度と消費エネルギーの関係について初歩的な議論を行った. つぎに,WWWからの情報検索を検討した.こちらもプロトコルを設計し,巨大な進化ネットワータに対する探索問題を議論した. 最後に,分子計算の効率的なアルゴリズムの設計請を検討した.特に,設計の基礎となる分子の2次構造変化にかかる時間についてモデルを建て,生化学実験結果と対照させることで,その妥当性を議論した.
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