研究課題
本研究の目的は要素数が巨大である分散システムを構築するためのアルゴリズム工学を構築することにある。そこで、代表的な巨大分散システムの分野としてWWWに代表される計算機ネットワーク、センサーネットワークやユービキタス計算を含む分散ロボットシステム、そして分子計算を取り上げ、これらの分野に属するシステムを、分散アルゴリズムの設計という観点に立って、効率性と耐故障性という二つの側面から検討した。それぞれについて特筆すべき結果を一つずつ要約する。効率性については、局所情報を用いる高速な乱歩の設計論があり、分子計算速度の解析や高速サーチエンジンの設計などの他に(我々の直接の研究目的からはみ出しているがシミュレーション工学で必須の)サンプリングに対する応用がある。耐故障性については、自己安定分散システムの設計という立場から、特に、分散ロボットシステムにおける自己安定性と識別子、記憶との関係を明確にした。それぞれの結果は、既に、国内外の会議や論文の形で発表している。しかし、多少の叱責を覚悟して述べると、本研究の最大の成果は、次に述べる新しい研究の出発点を得たことである。計算機ネットワークのような高度だと言われている(人造)システムは決定的、有識別子、有記憶、同期という高度なシステムを設計するのに有利な性質を備え、一方、自然に存在するシステムは確率的、無識別子、無記憶、非同期的という高度なシステムを設計するのに不利な性質を備えている。それにも関わらず、自然の分散システムが自然に持っている自律性を持つ高度なシステムの設計は非常に困難な課題で残されている。この一見すると矛盾に見える現象を正しく理解することが新しい課題であり、上記の自己安定性に対する研究結果から自然に現れた。挑戦的萌芽研究の助成を頂いて、研究を開始した所である。
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