研究概要 |
実験では硫化したGaAs基板にパラジウム原子を載せた系で周東・有澤(北大薬学)、塚本(阿南高専)らによってヘック触媒反応が報告されているので、まずその系に絞って第一原理計算を行った。2×2のスーパーセルでの第一原理計算により、硫黄原子とパラジウム原子のそれぞれの安定吸着位置と吸着エネルギーを計算した。さらに、硫黄原子とパラジウム原子がそれぞれ1個ずつ共吸着した場合での両原子の安定吸着位置と吸着エネルギーを計算した。また、それぞれの場合の電子状態の違いを調べた。 計算の結果判明したことは、硫黄原子を先に吸着させても、後から吸着したパラジウム原子の安定吸着位置の方が硫黄原子より内側となることと、硫黄原子との共吸着の場合の方がかなりパラジウム原子の吸着エネルギーが強くなることである。つまり、硫黄原子の役割はパラジウム原子を強く表面上に結合させることであると言える。このことは、実験において硫化していないGaAs基板上にパラジウム原子を載せた場合に触媒活性は示すものの数回の実験で触媒活性が失われてしまうのに対し、硫化させたGaAs基板にパラジウム原子を吸着させた場合は100回程度実験を繰り返しても触媒活性の劣化があまり起きないという事実を説明する計算結果であると言える。 このことから、硫黄以外の原子を代用させてパラジウム原子を固定させることも可能であることも結論づけられた。 また、GaN(0001)基板についてもパラジウム原子と硫黄原子の吸着位置を明らかにした。平成20年度は,主に,OSサーバ間の高速通信機構,ファイル管理サーバ機能,および適応制御機能の試作と評価を行った. (1)我々が開発しているAnTオペレーティングシステム(An operating syslem with adaptability and toughness)において、OSサーバ間の通信を高速に行う機構を設計し開発した。AnTは、プロセス間の複写レスでのデータ授受機能を支援するコア問通信データ域(ICA:InLer-core Communication Area)を有する。これを利用し通信を高速化する。この機構は、以下の特徴を持つ。 (A)複数のOSサーバにまたがる多段依頼を高速化しているとともに、返却時の処理不要部分を割愛できる直接返却を可能にしている。 (B)授受するデータの保護を可能にしている。 (C)使い方に合わせ、同期通信と非同期通信の両形式を可能にしている。 (2)AnTにおけるファイル管理サーバを設計した.ファイル管理サーバは,ディスクドライバ等の他のOSサーバとの連携が多発するため,性能が低下しやすい.このため,ICAを利用して入出力の高速化を図る。また,複数の論理ボリュームを統合することにより,ファイル管理の利便性の向上を可能にした. (3)入出力機器の動作履歴を考慮し,ドライバを起動する制御法を試作した。シミュレーション評価により,初期状態からの適応は早いことを明らかにした.また,自動削除は,利用回数を記録しておく期間を一回の計算機の動作時間より短くした時に起こり得ることを明らかにした.さらに,試作したAnTオペレーティングシステムでの評価でも,シミュレーションと同様な結果を得た. また,占有メモリ量を推察するため,プログラムの大きさを比較し、以下のことを明らかにした。 (A)LKMドライバとプロセス化ドライバは,OS一体型ドライバに比べ,プログラムが大きい. (B)LIMドライバをプロセス化する場合のプログラムの大きさの増減はプロセス化のために必要となる処理の増加と再配置情報の削除の大小関係により決定される。 (4)研究成果をまとめ,学会に発表した.
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