研究概要 |
本研究では,バイオメトリクス認証におけるテンプレート情報の漏洩という課題に対して,暗号プロトコルを応用したゼロ知識証明の技術を適用して,認証に用いる生体情報を検証者に漏らすことなく,正しく登録されている生体情報であることだけを証明する非対称なバイオメトリクス認証方式を実現することを目的としている. 本年度は,研究年度を終了する年度にあたり,提案方式の評価と新たな改良を試みた.その一部を,3件の国内会議と1件の国際会議にて報告を行った.また,昨年度までに行った類似度と暗号計算の評価をまとめた論文が国際ジャーナルに掲載された. 本年度行った研究のひとつは,生体認証の問題をグラフ彩色問題に帰着させて,真の生体情報を漏らすことなく正しいことだけをゼロ知識証明する方式である.本年度ではこの方式の実現可能性について検討した.また,多項式の根に生体情報の特徴量を割当てて,テンプレートと認証の2種類の多項式の積を用いて,登録された情報が分からなくても類似度だけを証明する方式を新たに発見した.この方式についてはいくつかの課題があることが明らかになった. 研究計画書で予定していた研究課題を実施し,十分な成果を得ることが出来た.その結果,また新たな問題点(登録生体情報の保持など)が明らかになった.これらの課題は,この生体認証分野における新たな研究テーマに繋がる動機を与えるものである.
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