平成21年度は、前年度までに設計・実装したコンポーネント及び実行システムを拡張することにより、コンポーネントの機能分化する機構を設計・実装した。これは社会や細胞と同様に、対等なコンポーネントよりも、役割にコンポーネントの機能を分化させ、その機能に特化したコンポーネントである。この機構を実際の分散システム上で実験・評価を行った。当初はコンポーネントへの外部呼出回数に応じて、そのコンポーネントへのスレッド割当数をかえることを想定していたが、過負荷状態でないと分化の有効性を活かせないことから、CORBAなどのオブジェクトブローカー機構を導入し、このブローカー機構が外部呼出回数に応じて、呼び出しに対応可能なコンポーネントを選択する方法とした。これはシステム実装上の判断であったが、実際の生物も胚発生において閉じた環境で分化が進むことと一致するという興味深い結果を得た。また、このブローカー機構の導入は、平成21年度において予定していたコンポーネントを構成するサブコンポーネントはJavaBeansなどの既存のソフトウェアを利用できるようにすることにも役だった。なお、これらの成果は平成21年度中に論文発表する予定であったが、一部が平成22年度となったために、経費の繰り越しを行い、平成22年度はその論文発表などを行い、当該国際会議でBest Paper Awardを授賞した。
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