研究概要 |
本研究の目的は,3次元の数値シミュレーションや計測等から得られるボリュームデータの特徴的な構造や振舞いに関する知見を効果的に獲得するために,微分位相幾何学的解析を導入することによって,対象となる3次元スカラ場の位相骨格を捉え,その情報に基づいてボリューム可視化を高度化するツール群T-engineを発展させ,さまざまな流動現象の複雑動態の効果的な解析のために,大規模高次多変量時系列ボリュームを対象とする視覚的データマイニング環境を開発することである.これを効率的に達成するために,今年度は以下のような研究を実施した. ◎T-engine拡充グループ:位相骨格化の高度化に関する理論的検討の一環として,位相特徴を可能な限り多く通過するような断面を自動選択する理論および実装(画像電子学会誌:2006),拡散テンソル場における連結性を3次元ホワイトノイズテクスチャの適応的拡散効果により可視化する手法であるDBT(Diffusion-Based Tractography)の開発(Volume Graphics2006)を行った.さらに,次年度に成果発表する予定分として,照明エントロピーの拡張的導入により,位相特徴の見えを考慮して,単一の平行光源を最適配置するアルゴリズムを提案し,その予備実験による評価を行った. ◎システム化グループ:流動解析グループからの助言を参考にしながら,流体位相コーパスの基本デザインに相当する拡張Wehrend Matrixを設計し,それに基づいてユーザの解析目的に叶う流れの可視化技法を対話的に選択し,商用可視化ソフトウェアAVS/Express上でアプリケーション開発を支援する環境GADGET/FVのプロトタイピングを行った(可視化情報2006).次年度に向けて,より網羅的な専用オントロジーを開発する予定である. ◎流動解析グループ:2次元ハイブリッド風洞におけるカルマン渦列の解析を基本例題に設定し,流動現象に対するT-engineの拡張可能性を検討した.観測流跡線に,計算された圧力場を,流入速度から決定されるレイノルズ数に依存せずにリアルタイムで重畳表示する機能を開発した(TFI-2006),次年度に成果発表する予定分としては,尾根環とよばれる位相特徴を導出し,渦領域を分離・表示する機能を開発した. なお,その他の研究成果(ビジュァルコンピューティング,分担執筆:藤代一成,茅暁陽:「ビジュアライゼーション」,第6章(pp.125-141)),(ASC2006),(画像電子学会誌2007)では,研究プロジェクト全体の成果を俯瞰する報告を行っている.
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