本研究では、情報を伝達するための「物語」の重要性に着目し、文書(テキスト)における物語構造モデルを定義し、物語を構成する要素の関係に基づく文書の分節の基本的手法を提案する。分節とは、区切ることによって関係を生じさせることであり、分節の具体的手法の研究開発は、既存の情報の粒度を変化させることにより、異なる関連を生み出し、文脈に応じて情報を再構成するために必要不可欠な技術である。本研究では、対象文書の中に出現する「語の依存度」と「語の吸引力」の概念を基にして、意味のある単位に文書を分解する手法を確立し、再構成するための文脈自身を探索しながら情報にアクセスすることを可能とする、ナラティブ連想情報アクセスのフレームワークを確立することを目的とする。 本年度、計画していた(1)潜在的多重文脈の顕在化と(2)多重文脈構造の視覚化に関しては、探索的情報検索について提案し、潜在的多重文脈を利用した探索的情報検索と視覚化技術に関する研究を行った。 (3)古文書への応用に関しては、北海道大学で開発されているTransmediaシステムと物語構造フレームワークの融合に関して検討を行った。21年度には、より詳細について検討し、応用システムとして開発を進める予定である。
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