本研究は、情報を伝達するための「物語」の重要性に着目し、文書(テキスト)における物語構造モデルを定義し、物語を構成する要素の関係に基づく文書の分節の基本的手法を提案することにより、「物語」を再構成するための文脈自身を探索しながら情報にアクセスすることを可能とする、ナラティブ連想情報アクセスのフレームワークを確立することを目的として進めてきた。 最終年度である平成21年度は、物語生成フレームワークの研究として、東京大学・史料編纂所の編年史料綱文、及び、復古記等の史料データに代表される編年型データを対象として、ナラティブ連想情報アクセス・フレームワークを適用した応用システムを構築した。 これまでに開発を進めてきた、大量の情報を分節する技術、及び、多重文脈を視覚化して顕在化する技術をシステムに組み込み、大量のテキストデータを漠然と眺めているだけではわからない知識を物語としてユーザが獲得することを支援するプロセスをデザインし、ユーザに提供可能とした。 これを用いて、歴史学研究者と共同研究を進め、歴史学において研究が進められている題材に対して、システムを適用して分析を行い、その結果を、歴史学研究者に評価してもらうことにより、システムの有効性について検証した。結果として、本システムを利用することにより、専門家が妥当と判断する知識を獲得することを支援できることを確認した。
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