研究課題
20年度では、脳情報学の方法論に基づき、人間の思考(計算活動)に関する実験により採取された脳波とfMRIデータについて、時空間に着目した分析や脳機能間の関連性について分析を行った。また、知的ポータルの実装の一例としてデータブレインの研究と開発を進めた。脳波分析では、波形の電位と傾きの2つの要素に対して、時空間の観点から特異性に着目した脳波データの多視点マイニング技法を開発し、数が画面に残ったままの暗算と、数が移り変る暗算とでは、後者のほうがより前頭葉の変化が急峻であることを確認した。また、従来の電位トポグラフィーを発展させた特異性指向トポグラフィーを考案し、時空間上の特異データ箇所を色相や色の濃淡で視覚的に判断できるようにした。fMRI分析では、計算活動を人間の問題解決プロセスの1つと位置付け、その理解を目的としたデータ解析を試みた。計算タスク/非計算タスクの設定や、数を画面に残す/残さないといった複数の呈示方法を設けたことにより、計算の有無による反応の違いや、記憶の負荷による反応の違いを導出することができた。具体的には、計算時の短期記憶と関連のある部位の同定や、機能連結分析による被験者ごとの脳機能間の相関関係を求めた。さらに、数を見るだけのタスクにより得られたデータを活用して数字の認知機能と関連が高い部位を同定した。また、知的ポータルの実装の一例として、概念的な脳のデータモデルであるデータブレインの研究を進めた。高次脳認知機能を表現するための概念モデルの構想をまとめ、推論や問題解決、意思決定といった認知機能と、記憶や注意といった要素機能の関連を示すモデルを検討し、その実装を行った。さらに、データを共有し統合化するための構造モデルについて構成の検討を行った。データブレインをエージェント化することにより、将来の自動分析が期待できる。
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