平成19年度に実現し高い認識率を実現した3次元顔形状に基づく個人認証システムをさらに発展させるべく、顔の3次元形状の特徴を利用した特徴点抽出アルゴリズムの開発を行った。これは顔のテクスチャのみならず顔の凹凸情報から、目、鼻、口、顎輸郭といった顔パーツの位置を推定し、特徴点抽出精度を向上させようとする試みである。この結果、レンジスキャニングが良好に行われた場合には、手動でラベリングした正解値に対して鼻特徴領域で95.8%、口特徴領域で81.0%の成功率を実現した。また、顔動画像を対象として表情変化時における微妙な表情変化を定量化するために、オプティカルフロー推定によって、特徴点の変動を画素単位の細かさで追跡する方式を開発した。また、この特徴点抽出結果からRBF補間によって、他のすべての顔特徴点を計算し、標準ワイヤフレームを個々の画像フレームに高精度にフィッティングし、テクスチャマッピングによって、表情変化時の皺や、顔の凹凸変化をもリターゲット可能な方式を開発した。これによって、表情変化をワイヤフレームの頂点変化として自動的にモデル化できることになり、頂点の平均とポリゴン単位のテクスチャ平均によって、平均顔動画像の合成が実現された。さらに、この動的特徴点追跡をHD動画像に適用して、作り笑いと自然な笑いの識別を実現したところ、オープンテストで72%の認識率が実現できた。さらに年齢・性別毎の平均顔を作成して、その特徴を定量化し、入力された顔画像から若返りや老化のシミュレーションが実現された。この方式は、年齢変化による個人認証精度の低下をノーマライズ可能な方式として有効である。今後は3次元の動的特徴を捉えるべく、カメラの複数台化等により、マーカーレスの顔モーションキャプチャシステムの実現を目標としてゆく。
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