研究概要 |
昨年度に引き続き,平成15-17年度の基盤研究(B)「顔の多義的・統合的印象を創出する高次元ダイナミックモデルの構築とイメージ処理応用」の成果である「印象変換ベクトル法」による高次視覚印象の人為的操作法に関して,視覚像の対象となる3次元物体や高次印象の種類,視覚像の観察条件,印象予測モデルの工学的応用領域,それぞれの拡張に取り組んだ。 まず,任意の3次元形状をもつ人工造形物に対する印象変換ベクトル法の拡張可能性の検討に関しては,自動車のボディ形状を例としてとりあげ,車種に応じたボディ形状の多様性を少数のパラメータで表現する3次元モーフィングモデルを構築した。そしてさまざまなボディ形状が与える視覚印象を一対比較法による心理実験を行って定量化した後,印象変換ベクトル法に準じる方法で視覚印象を操作するパラメータの変位を求める予備実験を行い,その効果を心理実験によって検証することで,任意の人工的な3次元造形物のデザインにおける印象操作の手法として,本アプローチの有効性を確認することができた。 また,3次元物体の具体例として顔を対象に限定し,その高次視覚印象(評価性,活動性,力量性,魅力,良さなど)の特性を心理学的手法によって明らかにする検討として,動的に変化する顔パターンから認知される高次視覚印象に対する心理的・表象的な慣性効果,および,繰り返し提示される刺激に対しては「好ましさ」に関する認知的・情緒的評価が高まるといわれる単純接触効果に注目して,今後検証すべき仮説を絞り込むための予備実験を行った。 さらに,個人性,姿勢,表情,視線といった顔の見え方を規定する要因を独立に制御可能な3次元顔CGモデルの構築を進め,これを視覚刺激として顔の動きの効果に関する心理学的な課題の実験的検証を開始した。具体的には視線方向の知覚に関して,頭部の回転角度に応じた視線方向の知覚特性,ならびに,「自分と目があう」位置への眼球制御による定位特性を明らかにした。
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