研究概要 |
生物の免疫ネットワーク・遺伝子や酵素反応ネットワーク・神経ネットワークなどは、いろいろな基本的要素が非線形相互作用することにより高度な機能を発現している。高度な機能や情報処理を行うシステムは、しばしば複雑な相互作用をした非線形力学系である。そこで本研究では、非線形力学系が機能を発現する場合に共通に重要な特性と考えられる以下の2点に関して研究を行った.(1)アトラクター間遷移とネットワーク上の時空間パターン生物が外界の環境に適応して行動するためには、タイミングや状況に依存して異なる行動をとるなど、高度な学習能力が必要である.振動的神経活動やスパイク相関が機能的に重要であるという実験的示唆が得られていたが、近年スパイクの相関を学習するための神経メカニズムとしてタイミングに依存したシナプス可塑性STDPが発見されている.本研究により、同期発火は行動の選択や切り替えに関連して、神経ネットワークの状態を経験に基づいた次の状態へスイッチする役割がある事が判明した.(2)周期発火しているニューロン集団を考え、その発火状態により結合強度が変化していく状況を非常に一般的な枠組みで解析した.このような系は神経活動が結合変化の影響を受ける一方、神経活動に依存して結合もまた時間変化することで多様な振る舞いを示す。解析の結果、3つの構造安定な典型的な挙動を示すことがわかった。系の持つ機能性に関してヘッブ的な学習ルールの場合は二値記憶と同等の記憶能力があり、STDP的な学習ルールではいろいろなタイミングや時間的シーケンスが記憶可能であることがわかった.また,残りはカオス状態を示すことが判明したが,その機能的意味の検証は今後の課題である.
|