平成20年度は、19年度までの実験結果を整理し、分析した上で、学会などでの報告を中心に活動した。 19年度は、日本だけでなく、米国でも実験を行ったが、その結果は20年度に得ることが出来た。そのため、それまでに行った日本での実験の分析結果と米国の研究結果を総合し、国際比較したデータ分析を行った。 まず、米国での実験においてもチャットの編集者を1人選択し、その1人に対して異なる2種類の金銭インセンティブを課すことで、金銭インセンティブが有効であるかどうかを検証した。通常のインセンティブ理論では、金銭インセンティブが高いほど努力水準も高くなり評価も高くなることが示される。しかしながら、当該実験のように、チャット参加者が、その中から選ばれた編集者によるチャットの編集成果を評価するという、いわば参加者による相互評価を導入した場合、むしろ高い報酬のほうが、低い評価につながるという結果を得ている。これは特に日本において顕著だったものの、日米総合したデータにおいてこの結果が優位に支持された。結果は内外の学会などで報告した。 また、会話型知識に関する著作権に関する研究も並行して行い、会話型知識の利用に際して問題となる再創造物に関する著作権の経済分析について、特に我が国の人格権の適用がホールドアップ問題につながることを示し、連携研究者の田中辰雄・林紘一郎編著の著書「著作権保護期間」の1章としてまとめたのに加え、拡張した論文の学会報告などを行った。
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