研究概要 |
記憶錯誤に関わる神経基盤を明らかにするため、本年度はまず記憶想起の際の内側側頭葉と連合皮質の神経活動を脳機能画像法で測定した。無色の無意味図形・有色の無意味図形の記銘の後、これら全ての図形とディストラクタを無色で呈示し、記銘したものかどうか、そして記銘した図形であれば何色であったかを想起させる課題を施行し、PETにより脳血流量を測定した。その結果、有色であった図形を想起する際には、内側側頭葉と色情報の処理に関与する領域の両方が賦活することが明らかとなった(Ueno et al.,2007)。これは記憶想起の際に内側側頭葉だけではなく、個々の記憶構成要素に関与する連合皮質の再活動が重要である可能性を示している。本年度はこの結果と先行研究の知見に基づき、虚再認の際の内側側頭葉と連合皮質の神経活動を測定するためのfMRI実験の作成を行った。さらに、アルツハイマー病の患者群を対象とした記憶錯誤についての神経心理学的研究も開始しており、新たな記憶検査の開発とその妥当性の確認が概ね完了した。本年度はこの他に、人名・顔・人物の意味情報の処理には両側側頭葉前方が関与しており、その賦活は連合学習が進むと変化することをfMRIによる実験で明らかにした(Tsukiura et al.,2006)。また、ヒトが嘘をつく時に活動する脳領域を同定し、さらにその中でも外側前頭前野、内側前頭前野、前部帯状回、扁桃体の賦活が、嘘に関わる記憶や情動の要因によって変化することを明らかにした(Abe et al.,2006;2007)。
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