研究課題
本研究は、乳幼児において観察される効果的な諸彙の学習にみられる柔軟かつ自己生成的な学習過程が具体的にどのような内部メカニズムによって産み出されてくるかを解明することを目的とする。具体的には語彙が爆発的に増えていく2歳から5歳までの幼児期に子どもは動詞と名詞をどのようなメカニズムで学習しているのか、それらの学習においてどういう側面が言語普遍的でどういう側面がどの程度インプット言語に特化したものなのか、またそこにおいて語意学習バイアスは用いられているのかという問題を検討した。日本語、中国語、英語を母語とする3歳児と5歳児に、人が新奇な物体に対して新奇な動作をしているビデオを見せ、新奇な名詞あるいは動詞を提示して、子どもが名詞の場合には物体の同一性にのみ注目し、動詞の場合には動作の同一性にのみ注目して名詞、動詞の汎用が行えるのか、そこにおいて母語の言語の影響があるのかを検討した。物体に注目した汎用はどの言語の話者も可能だが、動作に注目した汎用は5歳になるまでできなかった。また、動詞に屈折変化がなく、形態的に動詞と名詞の区別がない中国語を母語とする中国語児は特に動詞の汎用が難しかった。このことは言語普遍的に動詞学習が名詞学習よりも難しいこと、言語の構造的性質が動詞学習に影響を及ぼすことを示す。この知見はChild Development誌に掲載された。さらに幼児はどのような手がかりを使って動詞語意推論をしているのかを検討する実験を行った。結果、モノにおける類似性を手がかりに動作の類似性に注目していき、徐々にモノを変数として動詞にとってより重要である動作様態や結果が重要であることに気づいていくという知見が得られた。
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