20年度は、これまでの研究の取り纏めと、研究成果の論文化、国際会議等での研究発表などに力を注いだ。特に、本研究の目的である脳磁場データの統計学的解析法と機能的磁気共鳴画像法との統一手法の開発に取り組み、以下のような高次脳活動に対する具体的課題に適用し一定の成果を挙げることができた。 (1)顔画像や色画像の認知に対するカテゴリー事象関連脳活動の信号源推定(2)匂いの知覚と認知に対する脳活動の信号源推定(3)ワーキングメモリ課題、及び思考停止課題に対する脳活動解析法の開発(4)情緒的音声反応、並びに外国語学習者の脳内聴覚野応答の解析(5)五感の感覚統合機能に対する脳活動の計測・解析法の検討 脳磁界(HEG)と機能的磁気共鳴画像(fMRI)計測は、研究協力機関装置を用いて実験を行った。解析は、双方の実験における同一課題・同一被験者について実施したデータを千葉大学に持ち帰り、SPM解析ソフト等を用いて双方のデータを比較・検討しながら統一的に解析を行った。 この結果、上記に述べたような種々の高次脳活動の課題に対して、従来、単独でMEG解析やfMRI解析のみを行っていた先行研究結果に比べ、より一般化・統合化による解析法の有効性が示唆された。また、これらの研究成果から、複数感覚間刺激の脳活動解析法、脳の感覚統合機能研究などへの手掛かり、特にヒトめ脳の前頭葉眼窩野、扁桃体、海馬、島皮質、視床下部など、脳の重要な深部における機能解明への端緒が得られた。
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