研究課題/領域番号 |
18300107
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
稲垣 直之 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (20223216)
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研究分担者 |
島田 忠之 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (80379552)
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キーワード | 神経細胞 / 極性 / 軸索 / 樹状突起 / Wave / PI 3-kinase / ノックアウトマウス / Shootin1 |
研究概要 |
神経細胞は1本の軸索と複数の樹状突起を形成し極性を獲得する。神経極性は、神経細胞の基本的な機能であるシグナルの入出力や統合に重要な役割を果たす。最近の数多くの報告から、PI 3-kinaseやPAR3/6、GSK-3ベータ、CRMP-2といった分子群の細胞内におけるシグナルの非対称性が培養海馬神経細胞の極性を形成することが明らかとなりつつある。しかし、このようなシグナルの細胞内における非対称性がどのような分子メカニズムで生じるかという問題は大きな謎である。最近、我々は新規神経極性形成タンパク質Shootin1を見出した。Shootin1は極性形成とともに神経細胞内で非対称に軸索に濃縮する。本研究では、Shootin1の機i能解析を行い、極性形成過程における非対称シグナルの形成のメカニズムを解明する。 PI 3-キナーゼは、神経極1生形成を司るシグナル伝達の上流に位置する重要な分子である。免疫沈降実験により、Shootin1がPI 3-キナーゼと相互作用することがわかった。また、Shootin1は、PI 3-キナーゼ活性の非対称な細胞内分布に影響を与えたが、PI 3-キナーゼの活性を阻害してもShootin1の非対称な細胞内分布に影響はなかった。さらに、Shootin1による軸索形成はPI 3-キナーゼの活性を阻害することにより抑えられたが、反対にPI 3-キナーゼによる軸索形成はShootin1の発現をRNAiにより抑制しても影響を受けなかった。これらの結果から、Shootin1がPI 3-キナーゼの上流において非対称シグナルの形成を調節する可能性が示唆された。 Shootinlは、Waveと呼ばれる成長円錐様の構造体とともに、神経突起内でアクチンおよびミオシン依存性に細胞体から突起先端に向かって塊となって輸送されることがわかった。また、この輸送をアクチンやミオシンの阻害剤で抑制すると、細胞内のShootin1の非対称な分布が形成されなかった。これらの結果から、Shootin1のWaveによる輸送がShootin1の非対称シグナルの形成に重要な役割を果たす可能性が示唆された。また、Shootin1の更なる機i能解析のためにノックアウトマウスの作成を開始した。
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