長期培養ラット上頸交感神経節細胞間に形成されたコリン作動性シナプスのシナプス前神経細胞に、蛋白質-蛋白質相互作用部位ペプチドや、蛋白質フラグメントを導入して、シナプス前終末でSNARE蛋白質と相互作用してシナプス開口放出を制御するトモシンの機能解析を試みた。シンタキシン、シナプトブレビン、SNAP-25と呼ばれる3つの蛋白質複合体(SNARE複合体)が、シナプス小胞からの神経伝達物質放出に関わっている。トモシンはカルボキシル基末端部位でシンタキシンと結合してSNARE複合体形成を阻害する。しかし、トモシン欠損マウスでは伝達物質放出が増加しているにもかかわらず、SNARE複合体が減少していた。これは、トモシンのアミノ基末端部位がSNARE複合体の重合を促進することに起因する。培養神経シナプス前終末にトモシンのアミノ基末端部位を人為的に与えると神経伝達物質放出が減少し、トモシンが神経伝達物質放出を抑制していることを示唆する。また、カルボキシル基末端部位に隣接する部位(tail domain)がカルボキシル基末端部位に結合して、SNARE複合体との形成を調節することも明らかとなった。 同様の手法と蛋白機能阻害薬(Dynasore)を用いてのシナプス小胞エンドサイトーシスに関わるダイナミンの機能解析によって、ダイナミンが神経活動に依存してクラスリンコートされたシナプス小胞エンドサイトーシスと神経活動に依存せずクラスリンコートされないシナプス小胞エンドサイトーシスに関わっていることが示唆された。 さらに、シナプス前神経細胞へのsiRNA導入による蛋白ノックダウンによる、シナプス伝達に不可欠なエネルギーを産生するミトコンドリアの神経終末への運搬に関わるシンタブリンの機能阻害は、シナプス形成の遅延とシナプス伝達障害を引き起こし、ATP供給によって部分的に回復されることが明らかとなった。
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