本研究の目的は、輪郭線中に埋め込まれた折れ曲がり刺激に対する刺激選択性を詳細に調べることにより物体の形状を表現する神経メカニズムを明らかにすることにある。折れ曲がり刺激選択性形成のメカニズムを明らかにするためにサル第二次視覚野より麻酔下で長時間安定な記録を行い以下の点を明らかにすることを企図した。(1)受容野内外の局所的な入力の時空間特性を明らかにする。(2)折れ曲がり刺激の2線成分間の相互作用の時空間特性を明らかにする。(3)抑制性入力の寄与を薬理学的に明らかにする。(4)近傍ニューロン問の反応選択性の類似度、集団としての反応選択性、集団間の機能的結合関係を明らかにする。本年度はこれらの実験をおこなうために、(1)シールドルームを設置し、人工呼吸器、各種モニター、ガス麻酔器等、および電気記録の為の実験セットを整備充当し、一回15時間ほどの亜急性実験のプロトコルを確立した。(2)金属針により硬膜に小さな穴を開け、そこから記録用金属電極または薬物注入用のガラス電極を刺入する技法を確立した。(3)Dr.Yi Wang(Chinese Academy of Science)よりタングステン電極と多連ガラス電極を組み合わせた薬液注入のための電極作成法を習得した。(4)大澤五住教授(大阪大学)らの協力によりLSRC相関解析法用の記録システムおよび解析用プログラムを準備した。(5)8チャンネルの増幅装置および記録システムを準備した。(6)年度末よりサルの第二次視覚野より単一細胞の活動を記録し、GABAa受容体の拮抗阻害剤(Gabazine)を記録部位に微量注入して抑制性シナプスの活動を阻害して抑制性入力の寄与を薬理学的に明らかにする実験、およびLSRC逆相関法による受容野の時空間特性と折れ曲がり刺激選択性との関係を調べる実験に着手した。次年度は両実験を継続して行う。
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