本研究は輪郭線中に埋め込まれた折れ曲がり刺激に対する刺激選択性を詳細に調べることにより物体の形状を表現する神経メカニズムを明らかにすることを目的とする。この為に麻酔下のサル第二次視覚野より長時間安定な細胞外記録を行い受容野内外の局所的な入力の時空間特性を探る。今年度は全長8度のニューロンの受容野を横切るような折れ曲がり刺激と、全長が0.5-3.0度で受容野内に呈示される折れ曲がり刺激を用いてニューロンの選択性を比較した。全長8度の刺激では60-150度の折れ曲がり刺激に選択的に反応するニューロンにおいて、半数のニューロンでは刺激の大きさによらず折れ曲がり刺激に対する選択性が維持されたが、残りの半数のニューロンでは短い直線に対して選択的な反応を示すようになった。この結果は折れ曲がり表現の形成において受容野内の局所情報に加えて受容野外からの文脈依存性の修飾作用が重要な役割を果すことを示す。この結果をさらにサポートするものとして、大澤五住教授(大阪大学)らと共同でLSRC逆相関法による受容野の時空間特性と折れ曲がり刺激選択性との関係を調べ、またDr.Yi Wang(Chinese Academy of Science)による薬液注入電極に改良を加えて単一細胞の活動記録中にGABAa受容体の拮抗阻害剤(Gabazine)を記録部位に微量注入して抑制性シナプスの活動を阻害して抑制性入力の寄与を薬理学的に調べた。これらの記録については来年度も引き続き継続して十分な数のデータを得てから結論付けたい。
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